2025-2026 Seminar Schedule (Apr 2025 - Mar 2026)
セミナー等は通常理学研究科5号館 501号室にて行なわれます。
Seminars are held at Room 501 in Faculty of Science Bldg. No.5,
usually in Japanese.
セミナー係 : 福間、古郡、桑原、杉下、杉浦、世田、吉岡
Apr. 23 (Wed) 15:30-
"de Sitter時空におけるブラックホールの第一法則と宇宙検閲官仮説の検証"
吉村 果保 氏 (東京大学)
漸近的平坦なブラックホール時空においては、一般座標変換不変性に基づく保存量の議論により第一法則が導かれることが"covariant phase space formalism"として知られている。また、ブラックホールに物質を投げ入れる思考実験に対してこの議論を応用することで、宇宙検閲官仮説は破れないということが示されている。この手法はSorce-Wald形式と呼ばれ、投入するエネルギーやチャージのバックリアクションを含めて評価できることが特徴である。
本セミナーでは、漸近的平坦時空でのこれらの先行研究を紹介し、この拡張としてde Sitter時空におけるブラックホールの第一法則を導出した研究
https://arxiv.org/abs/2411.19535について発表する。また、この論文では、de Sitter時空中の荷電ブラックホールについて宇宙検閲官仮説を検証している。
Apr. 30 (Wed) 15:30-
"TBA"
福田 将来 氏 (東北大学)
TBA
May 7 (Wed) 15:30-
"Bridging two semiclassical confinement mechanisms: monopole and center vortex"
林 優依 氏 (基研)
伝統的なクォーク閉じ込めの理解として,monopoleによるものとcenter vortexによるものがある.近年,それぞれのシナリオを実現する,半古典的に閉じ込め真空を記述する2つの方法が発展してきた.具体的には,S^1コンパクト化された設定におけるmonopole dilute gasによる閉じ込め真空の記述と,T^2コンパクト化された設定におけるcenter-vortex dilute gasによる閉じ込め真空の記述が知られている.この講演では,その2つのセットアップをつなぎ,半古典的に取り扱える領域においてmonopoleとcenter vortexの関係を明らかにする.この結果は,以前から期待されてきたmonopoleとcenter vortexの関係を説明する.また,時間に余裕があれば,N=1 super-Yang-Mills theoryの半古典的方法への応用についても議論したい.
May 14 (Wed) 15:30-
"有限温度Large-Nゲージ理論におけるスケーリング則と虚の化学ポテンシャルへの応用"
森田 健 氏 (静岡大学)
Large-Nゲージ理論は, S1コンパクト化空間を含む空間上である種のスケーリング則を非摂動的に満たすことを示す.
このスケーリング則は, S1をユークリッド時間とする有限温度系で特に有用で, 有限温度における物理量に強い制限を与えることが出来る.
またこのスケーリング則は, 虚の化学ポテンシャル(虚の角速度や虚のR電荷化学ポテンシャル)を持った系の相構造を解析する際に強力である. 本講演では虚の化学ポテンシャルの物理的な意義をレビューし, ゲージ理論やholographyにおける応用を紹介する.
May 21 (Wed) 15:30-
"Gravitational EFT for dissipative open systems"
西井 莞治 氏 (東京大学)
本発表では、動的重力に結合した散逸性開放系に対する有効場理論(EFT)の構築について、散逸流体力学のEFT(HydroEFT) に関する進展を踏まえて詳述する。我々の構築は、Schwinger-Keldysh形式とその対称性、さらには微視的ユニタリティに基づく。
重力理論の重要な性質は、重力がすべての自由度に普遍的に結合することである。そのため、EFTは散逸系からエネルギーが流出する環境のエネルギー運動量テンソルを考慮に入れる必要がある。この効果を取り入れるために、環境をHydroEFTに基づいてモデル化し、環境セクターの微分展開の有効性を仮定する。例として、我々のEFTのレシピを重力に結合した散逸性スカラー場に適用し、例えば散逸的インフレーションへの応用が可能であることを示す。特に、環境セクターのゆらぎがスカラー場のダイナミクスに与える影響を定量化する。
また、同じ枠組みを散逸重力理論にも適用し、散逸重力波やブラックホール熱力学の一般化された第二法則についても議論する。
May 28 (Wed) 15:30-
"格子ゲージ理論と混合状態の物質相"
安藤 貴政 氏 (基研)
混合状態における大域対称性は strong symmetry と weak symmetry の2種類に大別される。近年の研究において、これらの対称性に基づいた物質相、たとえば対称性が自発的に破れた相やトポロジカル相などに関心が集まっている。本研究(
https://arxiv.org/abs/2411.04360)では、格子ゲージ理論の状態から出発して strong symmetry が自発的に破れた相の混合状態を系統的に構成できることを示した。この構成で得られる混合状態での秩序変数の期待値は、もとのゲージ理論でのふるまいから直接得られる。応用として、混合状態特有の臨界相の密度行列をいくつかの具体例に対して明示的に与えた。
本セミナーではまず、strong/weak symmetry の定義とその破れ、および格子ゲージ理論についてのレビューを行う。つぎに本研究の主要な結果について紹介し、適当な条件のもとでの格子ゲージ理論の状態はつねに strong symmetry が自発的に破れた混合状態の純粋化状態だと解釈できることについて説明する。さらに時間の許すかぎり具体例についての解説を行う
Jun. 11 (Wed) 15:30-
"Selection rules of topological solitons from non-invertible symmetries in axion electrodynamics"
横倉 諒 氏 (慶應大学)
本講演ではアクシオン電磁気学における非可逆対称性とトポロジカル・ソリトンの選択則について議論する。まず、アクシオンもしくは光子が質量を持つ系の低エネルギー極限に存在しうるソリトンであるアクシオン・ドメインウォールもしくは磁束渦がそれぞれ0次もしくは1次非可逆対称性の生成子とみなせることを示す。これらの生成子による磁気単極子やアクシオン渦への非可逆対称性変換から、磁気単極子などがある元でのトポロジカル・ソリトンの可能な配位に対する選択則を議論する。特にアクシオン渦と磁束渦がリンクした配位に選択則が存在することを示す。また、既知のアクシオン・ドメインウォール問題に対する磁気単極子による解法が、非可逆対称性に基づいて理解できることを確認する。